医療機関で働くいくつかの職種にスポットを当てます。

特定看護師という資格について

「療養上の世話」と「診療の補助」の2つに看護師の仕事は大別されます。「療養上の世話」については、看護師は単独で行うことができます。しかし、「診療の補助」は医師の指示がないと、看護師が単独で行うことはできません。「診療の補助」とは医師が行う医療行為を補助することを指します。ただし、看護師に許されている医療行為は、相対的医療行為と呼ばれるものに限定され、医師しかできない高度な技術を要する医療行為は絶対的医療行為として区別されています。

具体的な例を挙げると、投薬や紹介状の作成は、相対的医療行為に含まれます。そのため、医師の指示があれば、看護師も行うことができます。しかし、注射や点滴を医師の指示なく行うことは禁止されています。

ところが、特定看護師という制度が導入されてからは、看護師も新しい資格を取得すれば医師の指示がなくても21分野にわたる38もの医療行為を単独で行えることになりました。特定看護師とは、特定行為研修を受講して修了したことが認められた看護師のことをいいます。特定看護師になると従来は医師の指示がないとできなかった気管カニューレの交換や抗けいれん薬の臨時投与などが単独でできるようになるのです。

そのため、この制度の導入により、特定看護師を現場に配置すれば、医師がいなくても看護師がスピーディーに処置できるようになりました。また、キャリア志向の看護師の中には、医療行為の権限が拡大された特定看護師になりたいという希望者も増えつつあります。ただし、特定看護師になるためには、3年から5年の実務経験が必要であり、なおかつ数の限られた研修機関に応募して選考に合格した後、半年から2年間通学して必要な研修科目を修了しなければならないため、非常にハードルは高くなっています。